大切なのは顧客よりも働く仲間である

よくお客さまが一番大事と云う。

しかし、本当だろうか。

お客さまが一番大事というのであれば、自らを犠牲にしてお客さまに奉仕するのであろうか。

違うと思う。

お客さまが大事な理由は、私たちの商品やサービスを購入してくれて、お金を払ってくれるからである。

お客さまを大事にした方が、私たちが幸せになるから、お客さまを大事にするのである。

そもそも、共に汗を流して苦労している仲間と、場合によっては一回限りの取引になるかもしれないお客さまを比べて、お客さまの方を大事にするということは、人間性に反しているのではないか。

にもかかわらず、社員を犠牲にしてお客さま満足を高めようとすることを、正しいと思っている経営者は多い。

逆説的だが、このような経営者の下で、社員がお客さまを大切にしてその満足を高めようとする努力を払うとは思えない。

意味は少し違うが、「修身斉家治国平天下」という言葉がある。

まずは身近からきちんとすることが、大事なのである。身近な社員を幸せに出来るかどうかが、経営者としての第一の試金石であろう。

企業というものは、お客さまにより良い商品やサービスを提供することによって収益を得ている。

その意味で、企業とお客さまは、お互いにウィンウィンの関係が築ける筈だし、それを目指すことが大事である。

しかし、現実には利害の対立が生じることがある。

具体的には、ある社員とお客さまが対立する場合がある。

不法行為やミスは許すことは出来ないが、そうでない場合は、社員の側に立つことの方が、私は経営者として正しい判断なのではないかと思う。

私たち一人一人は微力であり、日本を世界を、いっぺんに良くすることも幸せにすることも出来ない。

出来ることは、まず身近な仲間を幸せにし、良い会社を作るための努力だけである。

ある朝、海岸に無数のヒトデが打ち上げられたという。

一人の少年が、そのヒトデを拾い上げては、海に返していた。

通りかかった人が、「そんなことやっても無駄ではないか、キリがないだろう」と話しかけた。

それに対し、少年は、「確かにそうです。でも、この一匹にとっては無駄ではありません」と応え、ヒトデを海に返し続けたという。

良い会社を作ったり、世の中を良くしたりするということは、こういうことなのだろう。 t,n,s=