『老子』功成り名遂げては退く

老子の思想は、世俗を超越しているようであって、実は処世訓として素晴らしい。

いかにも、逆説的である。

器に水を一杯にして、こぼすまいと心配するくらいなら、一杯にしなけば良い。

刃物を鍛えて鋭くし過ぎれば、かえって長持ちしない。

財宝が蔵に満ち溢れたならば、それを守りきることは難しい。

偉くなって傲慢になれば、他人からの恨みをうけることになる。

功成り、名を遂げたならば、早々に身を退けることが、道理にかなっている。

その通りである。

ただ、かなしいことに、人の欲がこの道理を妨げてしまう。

出典 (明治書院)新釈漢文大系7 『老子』 24頁

運夷第九

持而盈之不如其已。揣而鋭之不可長保。金玉滿堂莫之能守。富貴而驕自遺其咎。功成名遂身退天之道。

持して之を盈(みた)すは其の已むに如かず。

揣(きた)へて之を鋭くすれば長く保つ可からず。

金玉堂に滿つれば之を能く守る莫(な)し。

富貴にして驕れば自ら其の咎を遺す。

功成り名遂げて身退くは天の道なり。