「篤姫」は大好きなドラマである。
その一場面に、篤姫の実家の玄関に額があり、
「思無邪」
とある。
良い言葉である。
「思い、邪(よこしま)無し」と読む。
論語から来ている。
『詩経』にある三百の詩を一言で言い表せば、「思無邪」であると、孔子が述べたという。
島津斉彬が好きだった言葉だということであるが、篤姫の人物像と重なって趣きを感じる。
また、幕末から明治期にかけての日本人の在り方にも通じるような気がする。
司馬遼太郎が描いた、邪な思いを持たずに坂の上の雲を目指した、かつての日本人である。
今の僕たちの問題は、目指すべき雲が無いことであろうか。
それとも、思いの純真さに欠けていることであろうか。
出典 (明治書院)新釈漢文大系1 『論語』 38頁
為政第二
子曰、詩三百、一言以蔽之。曰、思無邪。
子曰く、詩三百、一言以て之を蔽ふ。 曰く、思い邪(よこしま)無しと。