孔子の政治学、もしくはマネジメント学の根本をなす考え方である。
ルールと罰による統治はうまくいかない、という。
人は、ルールの不備をかいくぐり、ルールに抵触さえしなければ、それでよしと考えるからである。
大事なことは、徳と礼儀だというのが、孔子の考えである。
この徳治主義で、現代の社会や組織を統治していくことは、実際は難しい。
これは、多くの人の共通認識であろう。
しかし、昨今、何でもかんでもルール化しようとする傾向が強い。
こうなると、孔子の徳治という考えを改めて見直す必要があると思う。
実際、いくらコンプライアンス(法令遵守)を叫んでみても、うまくいっているとは思えないからである。
僕が思うに、ルールを作り、それを徹底するためには、忘れてはいけない大原則がある。
それは、ルールの数はとにかく少なくするということである。
ルールが多くなれば、それだけで守られなくなる。
何故なら、覚えていられないし、チェックも出来ないからである。
会議が多いから、会議を少なくする会議を行うという笑い話がある。
これと同じように、ルールと罰によるマネジメントは、ルールを守らせるルールを再生産していく。
逆説的な考え方ではあるが、この社会や組織において、ルールを重視しようと考えるのであれば、出来るだけルールによらないマネジメント、つまりは徳治を最大限活用すべきではないだろうか。
出典 (明治書院)新釈漢文大系1 『論語』吉田賢抗著 39頁
為政第二
子曰、道之以政、齊之以刑、民免而無恥。道之以徳、齊之以禮、有恥且格。 子曰く、之を道(みちび)くに政(まつりごと)を以てし、之を齊(ととの)ふるに刑を以てすれば、民、免(まぬが)れて恥づる無し。之を道(みちび)くに徳を以てし、之を齊(ととの)ふるに禮(れい)を以てすれば、恥づる有りて且つ格る 。