馬は健気な生き物(75鞍目)

今日は昨日よりも暑かった。

人間も大変だが、馬はもっと大変だろう。

人間は自由意志で乗っているが、馬はそうではない。人間を乗せたいと思っている馬はいないのではないだろうか・・・・。

僕が乗っている馬は、これまでも何度も紹介したが、ティグレという。

正式名称は、「La Tigre Del Cielo」と言う。これはスペイン語で「天国の虎」という意味である。

ちなみに、お父さんは「Gallo Del Cielo」(意味としては、多分、天国の雄鶏)で、お母さんは「La Tigra Lani」(tigraは雌の虎だと思うが、laniの意味は分からなかった)。

血統に優れたクォーターホースの名馬である。

ティグレは、さほど愛想の良い馬ではない。

僕が馬房に行っても、多くの場合、知らん顔をしている。後ろを向いたままの時もあるし、寝転んでいる時もある。

今日も、僕が馬房の前に立っただけでは、知らん顔をしていた。

しかし、無口を持ち、馬房の扉を開けると、

「さぁ仕事か」

という感じで、馬房の出口に近づいてくる。無口を付ける時も、当然、じっとしている。

繋ぎ場まで曳いて行くときは、僕の前に出ることはない。止まれば止まるし、後ろに下がれば一緒に下がる。

繋ぎ場で馬装をする時も、全く抵抗する様子はなく、鞍を付けたまましばらく放っておいても、静かにじっとしていて、何の動きもない。あるとすれば、小便とボロだけである。

馬場に連れていくときも、腹帯を締めるときも、乗馬するときも、実におとなしい。

僕が始めたばかりの、超下手なときはべつとして、発進も軽いし、エキサイトすることもない。

しかも、スピンやスライディングストップなど、様々な動きをすることもできる。調教されているからと言えば、それまでだが、僕のような初心者が乗るのに、これほどの馬はそうはいないと思う。

今日も、暑い中、ティグレには随分頑張って貰った。

昨日から始めた新練習メニューも、少しは進歩したように思う。

そして、練習が終わって、ブライドルを外し馬体を洗い馬体を拭くときも、ティグレは静かで落ち着いており、当然、後ろに回っても何の問題もない。

ティグレが唯一、自己主張をするのは、繋ぎ場に繋いだままにして馬体を乾かしている時である。

繋いで10分くらい経つと、嘶いたり僕の方をじっと見るようになる。

馬房に帰りたいという意思表示である。

しかし、乾かしている最中に、他の会員さんが来てティグレに乗るという場合がある。

この場合、ただ繋いだままだと、

「もう仕事は終わったんだから帰らしてよ~」

という意思表示を続けるが、一旦、鞍を乗せると、あっという間に静かになる。

仕事モードに戻るのである。実に何とも大したものである。

ティグレ以外の他の馬のことはよく知らないが、ティグレを馬の代表として考えた時、馬という生き物は、実に健気な生き物だと思う。

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