『戦国策』一方聞いて沙汰するな

ある経営者と話をした時、彼は、部下の一人を盛んに褒めちぎっていた。理由を聞くと、
「泣き言を言わない。言い訳をしない。人の悪口を言わない」ということであった。
その部下と話をすると、経営者自身が自信と勇気を貰えるのだという。

中国の戦国時代、江尹(こういん)という魏の出身で、後に楚に仕えた人物がいた。

ある日、楚王に対して、彼は問いかけた。
「もし、他人の良い所を王様に申し上げることを好む者がいたなら、王様はどうされますか?」

楚王は、「それは君子だ。是非、登用したい」
と応えた。

江尹はさらに問うた。
「それでは、他人の悪いところを吹聴することを好む者がいれば、王様はどうしますか?」

当然のように、楚王は
「それは最低の人間だ。遠ざけるようにしよう」と応えた。

ならばと、江尹は言った。
「ということは、王様。臣下の中に不善をなす者がいても、王様は知らないということになります。何故なら、王様は良い話を聞くのはお好きですが、嫌な話や悪い話を聞くことを嫌っているからです」

楚王は、「なるほど」と納得し、
「これからは、良い話も悪い話も共に聞くようにしよう」と、言ったという。

リーダーの耳に良い話しか伝わってこない組織は、それだけで危険な状態にある組織である。
何故なら、良い事しかないといった組織は、ありえないからである。 そして、気を付けなければならないのは、リーダー自身が、そういう風に仕向けているのではないか、ということである。