みんなが賛成することは変革にはならない

ある科学史に関する本を読んでいる時、印象に残った言葉である。

ある科学者が、全く新しいコンセプトを発表した。

しかし、周り全てから相手にして貰えないのである。

落ち込んだ彼は、自信をなくし、自分自身、間違っていたのではないかと、疑心暗鬼の状態になった。

その時、妻がいうのである。

「だって最初から、みんな賛成するようなものであれば、変革にはならないでしょう」

仕事のことでも何でも、新しいコンセプトが、頭に閃くことがある。

アルキメデスの「エウレカ(見つけた)!!」という状態である。

早速、次の日にでも、みんなに話を持ちかけてみる。

ところが、思いの外、賛同を得られないということが、間々ある。多々かもしれない。

ここで、自信をなくしてしまう人もいれば、権力で押し切る人もいる。

この二つは違うようであるが、実は、どちらも、諦めてしまっていることに、違いはない。

何を諦めているかといえば、周りを説得し、理解賛同を得ることである。

しかし、何か新しいコンセプトや方法を話してみて、周りがすぐに納得するようであれば、その理由は二つしかない。

周りがイエスマンだらけで、何を言われても反対しない状態になっているか、そもそもが、自分が思っているほど新しいコンセプトではないか、ということである。

今、述べたことは、自分自身が上司の立場の場合であるが、自分が部下の立場で上司に新しいことを提案した時などは、まずは反対されるのが普通であろう。

しかし、この記事の表題通り、最初からみんなが賛成することは変革にはならない。

諦めずに、何度も提案することが必要になる。

心理学に「スリーパー効果」というものがある。

「情報」というものは、二つの要素から成り立っている。

「情報の」の中身そのものと、その「情報」を何から得たかという媒体である。

そして、「情報」の中身そのものは忘れにくいが、媒体については、忘れやすいという。

「この間、○○という話を聞いたんだが、誰から聞いたのかなぁ・・。それとも何かで読んだのかなぁ・・」といったことは、よくあるのではないだろうか。

頭の中に残った「情報」の中身は、時間と共に、多少の変質はしながらも、いつの間にか定着してくる。

長い会議の終わり頃に、自分が当初述べたと同じような意見を、他の人が言っているという経験を持つ人は多いのではないだろうか。

これが、「スリーパー効果」である。

自分の意見に、まわりの人間が賛同しないからといって、落ち込む必要もなければ、居丈高になって、周りを馬鹿にしてもならない。

周りがすぐに賛同しないということは、それだけ変革につながる提案だということである。 そして、本当に優れた提案であれば、時間をかけることによって、必ず、周囲は理解をしてくれるだろうということを、信じていきたい。