『荀子』毀誉褒貶は他人の主張

人が寒いのは嫌だと騒いでも、天が冬をなくすことはない。

広いのが嫌だと言っても、地が、その遼遠をなくすこともない。

天も地も、一定の正しい法則に則っているのである。

それと同じように、君子は小人ががやがやと批判をしても、その行いを変えることはない。

小人は、その場その場の利害に左右される。

しかし、君子は正しい法則に従い行動する。

毀誉褒貶は他人の主張、行藏は我に存す。我に関せず、我に関わらず(勝海舟の言葉)

なのである。

出典 (明治書院)新釈漢文大系6 『荀子 下』藤井専英著483頁

巻第十一 天諭篇第十七

天不爲人之惡寒也輟冬、地不爲人之惡遼遠也輟廣、君子不爲小人之匈匈也輟行。天有常道矣、地有常數矣、君子有常體矣。君子道其常、而小人計其功。詩曰、何恤人之言兮、此之謂也。

天は人の寒を惡(にく)むが爲(ため)に冬を輟(や)めず、

地は人の遼遠を惡(にく)むが爲(ため)に廣(ひろ)きを輟(や)めず、

君子は小人の匈匈(きょうきょう)たるが爲(ため)に行(おこなひ)を輟(や)めず。

天に常道有り、地に常數(じやうすう)有り、君子に常體(じやうたい)有り。

君子は其の常に道(よ)り、小人は其の功を計る。 詩に曰く、何ぞ人の言を恤(うれ)へん、とは、此を之れ謂ふなり。