『孟子』韓国ドラマ「イサン」

日曜の夜、NHK-BSで、偶然、目に留まり、観てしまった。

実は、一番興味を引いたのは、主人公が将来、王になるために勉強をする場面であった。

『孟子』の第一巻である、「梁惠王章句」という部分を暗誦するのである。

「孟子、梁の惠王に見(まみ)ゆ。王、曰く、叟(そう)、千里を遠しとせずして来る。また將(まさ)にもって吾が国を利するあらんとするか」

訳すほどのことはないと、思う。難しいのは、「叟」という言葉くらいであろう。これは、お年寄りという意味で、恵王は、「老先生」といった風に呼んだのであろう。

主人公である少年は、まだ幼いのに、立派な王になるために徹底的に勉強をする。

まさに、「男子、学ばざれば即ち已む。学べばまさに羣(ぐん)を越ゆべし」(『日本外史』を書き、幕末の尊皇攘夷運動に影響を与えた頼山陽13歳の時の詩)である。

ところで、この『孟子』第一巻「梁惠王章句」の後半には、こういったことが書いてある。。

「老いて妻なきを鰥(かん)と曰い、老いて夫なきを寡(か)と曰い、老いて子なきを獨と曰い、幼にして父なきを孤と曰う」

この4者こそが、世間で最も困っている可哀想な人たちである、という。

そして、古(いにしえ)の聖君は、愛情を持って、この人達を最優先に政治を行なったというのである。。

これからすれば、現代日本の政治は、愛のかけらもない政治だろう。

昨夜見たイ・サンの最後の方の場面でも、主人公の祖父である王は、こう、述べている。

王にとって最も大事なことは、民に対して憐れみの心、つまりは愛情を持つことである、と。

久しぶりに、引き続いて観ようかなと思ったドラマであった。