『孟子』目引き袖引きして人は嘲笑う

日本の社会は、宗教的な規律、つまりは神の規律や法といったもので動いてきた社会ではない。
社会を律していたのは、お互いの人間関係であり、その基本となるのは「恥」という考え方だったと思う。

人から見て恥ずかしいことをしない。
これが、倫理の基準であった。

みっともないことをすれば、周囲から目引き袖引きして嘲笑われたのである。

それが、ここに来て大きく変わってきているようである。
考えてみれば、最近、「恥」とか「恥じらい」、「みっともない」といった言葉自体、あまり聞かなくなってきた。

政治家のたかり根性から、いい若い者が電車で席取りに奔走している姿などを見ると、情けなく悲しくなってくる。

人から「恥」を無くしたら、動物と変わらない。


出典 (明治書院)新釈漢文大系4 『孟子』 446頁
盡心章句上
孟子曰、人不可以無恥。無恥之恥、無恥矣。

孟子曰く、人は以て恥づること無かる可からず。
恥づること無きを之恥づれば、恥無し、と。