『大学』偽薬効果

胃が痛いという人に、ただの水を胃に効く薬だといって与える。

そうすると、胃の痛みが治まる、これが偽薬効果といわれるものである。

気のせいではなく、本当に効くらしい。

ところが、薬を渡す人が、本当に薬だと信じて渡す場合と、ただの水だと知っていながら、つまりは嘘をついているという自覚をもって渡す場合では、その効果に大きな差が出るという。

嘘をついている自覚を持ちながら渡した場合は、偽薬はその効果を発揮しないらしい。

人は、表面をどんなに繕っても駄目で、内心が大事だということである。

小人は、誰からも見られていないときには、見つからないと思うときには、やりたい放題の行為に及ぶ。

人に見られているときは、心の中は別として、表面だけは善人として振る舞う。

しかし、人は人を見ぬくものである。

心の中の思いは、どんなに隠そうとしても表面に出てきてしまう。

だから、君子は内心の思いが善であることに気を配り、人に見られていないからといって、好き勝手なことをしたりはしない。

出典 (明治書院)新釈漢文大系2『大学・中庸』赤塚忠著 53頁

第二段第一節

小人閒居、爲不善無所不至。見君子、而后厭然揜其不善而著其善。人之視己、如見其肺肝然、則何益矣。此謂誠於中、形於外。故君子必愼其獨也。 小人は閒居しては、不善を爲すこと至らざる所無し。君子を見て、而る后(のち)厭然(えんぜん)として其の不善を揜(おほ)いて其の善を著はさんとす。人の己を視ることは、其の肺肝を見るが如く然(しか)れば、則ち何ぞ益あらん。此を中(うち)に誠なれば、外に形(あら)はると謂う。故に君子は必ず其の獨(ひとり)を愼むなり。