『唐宋伝奇集』シンデレラ

ここ2、3年、どうも面白い映画(DVD)が無いように思われる。

そこで、少し古いものを観てみようと、「エバーアフター」を借りてきた。

ドリュー・バリモア主演で、中身はシンデレラの話である。

以前にも観た映画であるが、充分に楽しめた。

ドリュー・バリモアのことが好きだし、ハッピーエンドが好きだから、当たり前といえば当り前ではある。

シンデレラと似た話が、中国にもあることは知っていたが、改めてwikiで調べると、楊貴妃がモデルだと書いてあった。

寡聞で、楊貴妃がモデルのシンデレラの話を、私は知らない。

私が知っているのは、『唐宋伝奇集』にある、葉限(しょうげん)という娘の話である。

葉限は、父親に可愛がられていたが、父が死んだ後、継母に苛められる。

ある時、葉限は、川で不思議な魚を見つけた。

家に持って帰り、餌を与えて育てると、どんどんと巨大になった。

そこで、裏庭の池に放って飼っていた。

この魚は、葉限が呼ぶと出てきたが、他の人間には姿を現さなかった。

魚のことを知った継母は、葉限がいない時を狙って、葉限の服を来て魚を呼び、出てきたところを捕まえて殺した。

食べたところ、非常に美味であったという。

魚がいなくなったことを知った葉限が嘆いていると、仙人がやってきて慰め、継母が捨てた魚の骨の在りかを教えた。

そして、その骨に祈れば、何でも望みが叶うことを告げた。

祭りの日に、葉限は、魚の骨に祈って、美しい着物と金の履を出し、着飾って出かけた。

ところが、継母とその娘に見つかりそうになり、逃げ出したところ、靴を片方落としてしまった。

この靴を拾った人間が、王様に売った。

王様が、この履を誰かに履かせようとしても、靴は自然と小さくなってしまい、誰の足にも合わない。

誰か、この靴を履くことができる人間はいないかと国中を探し回って、葉限を見つけた。

葉限は着飾って王の前に出頭した。

見ると、絶世の美女である。

葉限は、これまでの仔細を王に告げた。

王は、継母とその娘を殺し、葉限を妻に迎えた。

ざっと、こういった話である。

東洋と西洋で、別個にこれほど似通った話が生れる筈がない。

どちらが起源かは分からないが、相伝わったのであろう。

古代は、現代の私たちが想像している以上にインターナショナルであったのではないかと、いつも私は思っている。

ひょっとしたら、近代国家というものが成立した現代の方が、閉鎖的かもしれない。 さらに、昨今の民族主義、ナショナリズムの台頭ということを考えると、何とも重苦しい気持ちになってしまう。